踏切事故にまつわる思い出

「踏切事故にまつわる思い出」

水上勉氏の「踏切」を読む。 踏み切りの近くのアパートに住む、20以上も年下の愛人との思い出を綴る。という形式で書かれていた。 ある日、その踏み切りで、幼い子供を道連れに母親が飛び込み自殺を図る。 母親は、胴体を切断されるという無残な死に方をするが、その時子供はまだ生きていて、お母さん、お母さんと、弱弱しく泣きながら電車のまわりを回っていた。 しかしその子供も、線路で頭を激しく打ったらしく、後に運ばれた病院で息を引き取る。 という場面を読んで、胸がしめつけられそうに苦しい気持ちになった。 フィクションとはいえ、あまりにむごすぎて、読んでいて辛くなった。 道連れにされた幼い子供がかわいそうで、かわいそうで。

それにしてもフィクションで読む者にここまで生々しい感覚を覚えさせるなんて、作者のその技量に、ただただ感心した。 この小説は、母子無理心中の話がメインではないのだけれど、そこだけ強烈に印象に残ってしまった。 これを読んで、私はある母子のことを思い出した。

私がまだ生まれる数年前のことだった。 踏切で電車に轢かれる寸前で我が子を助けた母親が犠牲になってしまったというなんとも痛ましい事件があったそうだ。

つづく